小樽・札幌・ゲストハウス その5
焙煎体験が終わったら、あとは特に予定はない。
すぐ帰ってもいいし、せっかく来たのだから適当にぶらぶらしていってもいいと思っていた。明日の午前中に旭川で用事があるが、今日中に帰れば問題ない。
結局、札幌の友達と円山動物園に行くというカワムラさんにご一緒させてもらうことになった。
ゲストハウスやすべえに別れを告げ、路面電車ですすきの駅に出る。実は、北海道に住んでいながら市電に乗るのは初めてだ。乗り方がわからなくてなんとなく躊躇していたのもあるし、特に乗る必要に迫られなかったこともある。まさか、道外の人に乗り方を教えてもらうことになるとは思ってもいなかった。しかし、チンチン電車の風情は結構好きだし、初めての体験はうれしい。函館に行ったときも乗りたいと思いながら結局乗らなかったし(昔から本当にチャレンジしない男だった)、大学時代もすぐ裏に都電荒川線の終点があったにもかかわらず、結局乗らずじまいだった。あー、今東京へ行ったら、確実に乗るのに。そういえば、鎌倉でも江ノ電に乗らなかったな。いや、乗ったか?記憶があいまいだ。
中島公園から大通なんてすぐだとなめていると、結構痛い目にあう。正直、市電で行こうと提案してくれたのは、渡りに船だった。
道のど真ん中にある、幅の狭いプラットフォームはなんだか新鮮だった。料金は170円で後払いなんですね。非常にわかりやすい。
春の陽気の中をのんびり揺られながら、終点すすきの駅に到着。
カワムラさんのお友達のイクエさんとの待ち合わせ場所は、三越前のライオン像だ。ライオン!?と思ったが、行ってみると確かにライオンがあった。札幌では待ち合わせ場所の定番らしい。これも、長年北海道に住んでいながら全然知らなかった。
イクエさんとは、カワムラさんが前回の札幌滞在時にソーシャルアパートメントで知り合ったらしい。かわいいというよりも、カッコいいという形容詞が似合う女性だ。
地下鉄東西線で円山公園駅へ。天気がいいせいか、駅前から公園にかけて人がごった返している。公園の桜はすっかり散ってしまっているようだが、花見客でかなり賑わっていた。焼き肉の煙と匂いが立ちこめている。北海道と言えば、天気のいい休日は野外で焼き肉である。庭のない家でも、車庫の中でやってしまう。これが全国的な常識でないことは、北海道を出てみないとなかなかわからない。
が、今日の目的は円山動物園。緑に囲まれた動物園へと続く遊歩道を歩いていく。この遊歩道のことは、札幌での写真撮影会のときに知った。マイナスイオンたっぷりの癒される小路だ。
小路を抜けると、すぐ目の前に動物園の正門がある。街からちょっと移動しただけでこんなにいい環境があるのは、札幌ならではである。もし自分が札幌市民だったら、休日のたびにここを訪れるのではないだろうか。
年間パスポートが1000円だったが、札幌市民ではないので当然600円で普通にチケットを買う。
円山動物園の中には、どういうわけかセブンイレブンがある。このセブンイレブンは、園の内側と外側両方に接していて、どちらからも出入りすることができる。当然、外側から入った人は園の中に入ることはできないので、園内から入ってきた人には入店時にラミネート加工されたカードが手渡される。これがお店を出るときの通行証になる。円山動物園でセブンイレブンに入ったことはなかったので、なるほどー、と感心してしまった。こんな形で施設に組み込まれているコンビニは全国でも珍しいんじゃないだろうか?
外はぽかぽか陽気なので、アイスクリームでも食べたいなと思っていたら、なにやら同行2人が缶ビールを買っている。動物園でビール!考えもしなかった。しかし、あたたかい日に野外でビールを飲むのは大好きだ。自分も方針転換して缶ビールを1本買った。安上がりだけど、最高の贅沢!
せっかくなので、ビール片手におふたりの記念撮影。
そしてこっちは自分のビール。動物園だと、心なしかビールもさわやかに見える。
最近の円山動物園の話題といえば、シロクマの赤ちゃんが生まれたこと。行列誘導用の柵が設けられていて、前日までの混雑ぶりを物語っていた。この日は連休最終日のためかそれほど人は多くなく、あっさり見ることができた。バズーカを構えたオジサンオバサンが前をでーんと陣取ってはいたが。
ひとしきり動物園を楽しんだ後は、3人で居酒屋で飲むことに。
行き先でいろいろ紆余曲折があったあとに、西11丁目近辺のお店に落ち着いた。行き当たりばったりで入ったお店なので名前もよく覚えていないけど、落ち着いた雰囲気のいいお店だった。
道外から来た人にとって、やはりジンギスカンは食べたい物の筆頭だろうが、道内に住んでいたって意外と普段はそんなにジンギスカンなど食べないものである(少なくとも自分は)。たまに食べると、やっぱりおいしいと感じる。
お酒がまわるほどに、話も弾む。ふたりともそれぞれ昨日、今日初めて会った人なのに、旧知の仲のようにまったく違和感がない。
最近は(というか結構以前から)、1回何千円の飲み代というものが全く割にあわない不当な出費だと考えていて、よほどの相手でないと飲み屋には行く気にならない。が、この日はむしろ、まだ物足りないと思うくらいであった(いや、たいしたお金使ってないけどね)。
そして、カワムラさんと話していると、また岡山に行きたい熱が再燃し出した。行ったことはないけど情報から行きたいと思っている自分と、実際に滞在してみてその良さを肌で知っているカワムラさんとで、最近意気投合している点である。ぜひ近いうち、岡山で再会を果たしたい。
そして、無情にもタイムリミットはやってくる。旭川行きのJRの最終は11時5分。
楽しかった時間にすっかり満足しつつおふたりと別れ、札幌駅へと向かう。
帰りのJRの中では、もーこの上なくぐったりでした。
(やっと)おわり。