本と写真と珈琲が好き

書きたいこと、写真に残したいもの。思いつくまま、気の向くままに。

失敗と上書き

アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ

 

宮沢賢治雨ニモマケズ』でいちばん好きな部分。

 

こんなふうに生きられたらいいねって思うけど、なかなかそうもいかない。

危なくなれば、傷つきそうになれば、余裕がなくなれば、ドタンバで真っ先に自分を守ってしまうのが、人間。

そのために自分に有利になるような選択をしたり、公平な解釈ができなくなったりする。

これを書いた宮沢賢治自身だって、きっとそんな失敗を数限りなくしただろうと想像する。

 

失敗は尽きない。

失敗するたびに行動は萎縮し、言葉は選び過ぎるようになり(あるいは沈黙し)、 過去の失敗の記憶を引っ張り出しては反芻し、煩悶する。

 

消したくなる願望、リセットしたい衝動、あのときに戻ってあの選択を取り消したいという思い。

そんなものは、はっきりいって無意味だ。取り消しは効かないんだから。

 

できるのは、さらなる行動による上書きだけ。

だから、ある程度時間が解決してくれたら、動き出すしかない。

そうでなければ、過去の失敗だって成仏できないだろう。

キャンバスがどんなに汚くなろうが、ただひたすら塗り重ねていく。

 

それでもどうにもならない致命的な過ちというものもあるが(いや、どうなんだろう?)、何も取り戻せないと分かっていたって、その努力はきっと死ぬ瞬間までやめてはいけないんだろうと思う。

少なくとも自分はそれほどの失敗はしていないのだから、ありがたく思いたい。

 

近ごろなんとなくそんなことを考えている。