「ひま」について
僕は「ひま」がとても好きだ。
「ひま」をなにより大事にしている。
でも、うまく説明する言葉が見つからなかった。
たまたま立ち読みして見つけた以下のくだりが、自分の中でとてもストンと落ちた。
そして、その子供向けの本を購入した。
本の題名は『世界でいちばん貧しい大統領からきみへ』。
ある階級の人たちの「ひま」が成り立ったのは、もちろん奴隷がいたからこそのことだ。
そういう負の側面があることを考慮の外に置くわけにはいかない。
しかし、現代はたぶんその頃とは事情が違う。
忙しさや貧しさの原因が、一部の人たちが富を独占していることによるのはほぼ明らかだ。
人間にはもっとたくさんのひまな時間が必要。
豊かな人生を送るためにも、幸せな人生を送るためにも。
自分の政治への関心はそこから始まり、それに尽きると言っても過言ではないと思う。
ヨーロッパ中世の学問に、スコラ哲学がある。これは、古代ギリシャの「スコレー」が起源で、これが「ひま」という意味なんだ。古代ギリシャでは、スコレーは議論する時間のことだった。ギリシャ時代の人びとは大きな広場に集まって、話しあい、議論した。こうした社会に、スコレーつまり「ひま」が重要だったんだ。スコレーがあったから哲学が生まれた。弟子と歩きながら話した。アテナイの自分で作った学園の庭や小道を、歩いて散歩して考えたんだ。アリストテレスの弟子たちは「散歩する人びと」と呼ばれた。それが彼の教育法だった。「ひま」とは、そういう時間のことでもあるんだ。哲学は大学で学ぶだけじゃない、人生を通して抱き続ける問いなんだ。わたしたちはみな哲学者なんだよ。哲学は、製品として売ることができないから市場では相手にされないが、哲学を持たなければ、世の中にあふれているものごとから本物を見つけることはできないだろう。「ひま」は無駄じゃない。人が話し合う時間は大切なんだ。時間がかかるものではあるけれど、それが「生きている時間」なんだよ。きみとこうしてじかに向き合って、同じ時間を共にすることがすばらしいんだ。